高校卒業後、上京して10年。去年、久しぶりに地元の夏祭りに帰った。山間の小さな町で、毎年8月に開かれる祭りは、子どもの頃の思い出の中心だった。母に「今年は来なさい」と言われ、半ば義務感で帰省。駅に降り立つと、提灯の明かりと太鼓の音が懐かしかった。
浴衣を着て会場へ向かうと、幼馴染のケンタと再会。彼は地元で消防団に入り、祭りの準備をしていた。「お前、都会っ子になったな」と笑われ、照れ笑い。屋台で焼きそばを買い、子どもの頃のようにケンタと分け合った。メインイベントは、若者が担ぐ山車のパレード。ケンタに誘われ、急遽参加。重い山車に肩が痛んだが、沿道の「おかえり!」という声に力が湧いた。
夜、花火が打ち上がる中、母が「帰ってきてくれて嬉しい」と涙ぐんだ。その言葉に、離れていても地元が私の根っこだと気づいた。祭りの後、ケンタと川辺でビールを飲み、将来の話をした。彼は「いつか町を盛り上げたい」と夢を語り、私は都会での仕事の悩みを吐露。翌朝、母と朝市に行き、新鮮なトマトを買った。東京に戻ると、祭りの熱気が仕事の原動力に。以来、ケンタとSNSで連絡を取り、町おこしのアイデアを交換。祭りは、ただのイベントじゃない。家族や友との絆を再確認し、故郷の誇りを思い出す時間だ。来年は、都会の友人を連れて山車を担ぎたい。