転職活動中の1年、夜間開放の図書館が私の避難所だった。昼は面接や履歴書書きで疲れ、夜は静かな図書館で心を整えた。古い木の机と本の匂いが、落ち着く空間だった。ある夜、司書の女性が「この本、元気出るよ」と『アルケミスト』を勧めてくれた。
夢を追う物語に勇気づけられ、面接での自信に繋がった。常連の大学生、タカシ君とも仲良くなった。彼は建築を学び、図書館で模型を作っていた。「ここは夢のスタート地点」と笑う彼に刺激を受けた。ある日、面接で失敗し、図書館で落ち込んでいたら、タカシ君が「次、絶対いけるよ」とコーヒーを奢ってくれた。司書さんも「失敗は学び」とメモを渡してくれた。その温かさに涙が出そうだった。
数ヶ月後、希望の編集者に採用された。採用通知を手に、図書館に報告に行くと、司書さんとタカシ君が拍手で迎えてくれた。図書館は、ただ本を読む場所じゃない。人と夢が交錯する場所だ。今、編集者として本を作る仕事に誇りを感じる。休日は図書館に通い、タカシ君の建築話に耳を傾ける。司書さんの笑顔は、私の心の灯台だ。いつか、私が作った本をあの図書館に並べたい。