ギターを売った夜、思ったより部屋が広くなった

クローゼットの奥から引っ張り出したとき、ケースにうっすら埃が積もっていました。最後に弾いたのがいつだったか、正直思い出せない。たぶん二年以上は触っていなかったと思います。

そのギターを買ったのは二十六のときでした。バンドをやっている友人に影響されて、勢いで購入したフォークギターです。最初の一ヶ月くらいはコードを覚えようと必死で練習していたのに、Fコードの壁に阻まれたあたりからじわじわとフェードアウトしていった。よくある話です。それからずっと、部屋の片隅とクローゼットを行き来しながら、なんとなく手放せずにいました。

売ろうと踏み切ったきっかけは、引っ越しの荷造りです。「また弾くかも」という言い訳が、段ボールに詰める作業の中でついに崩れました。弾かない楽器を次の部屋に持ち込んでも、また同じことの繰り返しだと、ようやく観念したんです。

楽器の買取を専門に扱っているところに持ち込んでみると、状態を丁寧に確認してもらえました。素人目には傷があるように見えていた部分も、「演奏による自然な使用感の範囲」と言ってもらえて、思っていたよりしっかりした額を提示してもらいました。ギターは需要がある楽器だから、状態が悪くなければそれなりに値がつくと教えてもらいました。電子機器と違って、年式だけで価値が落ちるわけでもないそうです。

帰り道、ケースを持たずに歩きながら、少し後ろめたいような、でも清々しいような気持ちでした。

新しい部屋では、またいつか弾くかもしれません。今度はFコードを越えられるといいのですが、あまり自信はありません。